病院薬剤師のやりがいは何ですか。
とりあえず病院に就職しようと考えています。どう思いますか。
上のような疑問を解決します。
結論から言うと、病院薬剤師はかなり楽しいです。やりがいは人それぞれですが、目的が特になくても病院薬剤師を1~2年やることをお勧めします。
私も最初は何も考えず病院に就職しました。ブラック病院だったのでとても辛かったですが、今はホワイト病院に転職しています。現在は病院はやめられないかなと思うほど楽しく働いています。
その理由を今回は記事にし解説していきます。
病院薬剤師の仕事内容
病院薬剤師はどの部署で働くかにより仕事内容が全く異なります。
調剤・監査
調剤室では「調剤・監査・電話応対・窓口薬剤指導」が主です。
①調剤
外来処方・入院処方を取りそろえ、水薬・粉薬・軟膏を作成します。単純に聞こえますが、病院によっては退院薬や救急外来薬、透析患者用薬などで調剤方法が異なることがあるので、「院内既定」というマニュアルを暗記しておく必要があります。件数が多いと計数や規格ミスにつながりますので注意が必要です。
②監査
調剤された薬剤の正しさ、薬剤の用法用量の正しさ、相互作用チェック、患者指導用紙の確認、病棟送付をします。普通使用しない用法を疑ったり、最小投与量と最大投与量をある程度覚えていないとスムーズに監査できません。そのためある程度の経験者が監査を任せられることが多いです。おかしな使用方法でも病院によっては独自のデータや経験に基づいていることもあるので、経験が第一です。
③電話応対
院外処方箋を多く発行する病院では、処方の疑義照会が薬剤部にかかってくることも多いのではないでしょうか。当院は疑義照会は薬剤部に電話がかかってきます。一包化指示の追加や残薬調整などの内容がほとんどです。医師へ確認後に薬局へ返答する橋渡しの流れで行っています。直接医師に電話する薬局もあるようです。
④窓口薬剤指導
調剤した薬剤を窓口で患者へお渡しする業務です。運転禁止薬や抗癌剤など注意するべき薬剤について説明させていただいております。
【運転禁止薬は罰則がある?対応について解説】別記事にまとめてあります。ご参照ください。
病棟薬剤指導・抗癌剤外来指導
直接的に患者のベッドサイドへ行き、薬物治療についての説明を行います。
①病棟薬剤業務
入院患者に対して、治療方針や薬剤の効果説明・副作用確認を行います。問題があれば医師へ報告し、薬剤の変更や減量・中止の提案をします。副作用に関しては検査値と自覚症状を見て評価し、必要に応じて医師に中止や薬剤変更をしてもらうよう促します。
②外来化学療法指導
抗癌剤の点滴を外来で行って当日中に帰宅する患者に対しても指導を行います。病棟業務と似ていますが、検査値や症状により抗癌剤の投与を行えるかと検討します。また、副作用に対する対症療法の薬剤を医師に提案します。患者に対して、家で副作用症状が出現した際の対処法、病院に連絡する必要のある症状を理解していただきます。
注射払い出し・混注業務・院内製剤
①注射払い出し
すべての病棟に翌日使用する分の注射薬を準備して届けます。調剤業務と同様に投与量や相互作用を確認して、患者個人のトレーに入れて個別に準備し、病棟ごとに運搬します。
②院内製剤や抗癌剤の混注
点滴バッグに抗癌剤等の薬剤を混注する業務です。薬品の無菌性を保つことや抗癌剤の暴露対策をしながら作業します。ミスすると高額な損となるので集中力を必要とする業務です。院内製剤では注射薬のほか、坐薬や点眼薬、消毒薬など様々な薬品を作成します。
NSTやAST、緩和ケア等のチーム介入
栄養サポートチーム(NST)や抗菌薬適正使用支援チーム(AST)、緩和ケアサポートチームなど、院内には様々な多職種で編成されるチームがあります。
専門分野について勉強し、資格を取得すればこのようなチーム介入によって患者や病院に貢献することができます。それが好きな分野であれば仕事は楽しいものになるでしょう。
先輩薬剤師がいるので、チーム介入の方法やコツ・資格試験の勉強方法などの相談にのってもらえたり、資格取得するための勉強会出席の費用を負担してくれる病院もあります。
薬剤師の仕事について別記事でまとめていますのでよろしければどうぞ。【仕事内容】薬剤師は本当に不要なのか?体験した3症例で否定します。
病院薬剤師の給料はどのくらい
「マイナビ薬剤師」の集計を参照すると、病院薬剤師の平均年収は521.7万円とありました。
年収については半数以上の薬剤師が不満に思うとの回答があり、収入面ではあまりお勧めとは言えない現状があります。
「とりあえず病院に就職して、全体的な知識を得たい。」という考えや、
「病院に就職すれば後に転職するにしてもしやすいため、最初は病院。」
というように職場を決まる薬剤師は多いです。
病院に就職するのであれば、「ある程度の給料」と「仕事のやりがい」と「忙しすぎない仕事内容」のバランスが欲しいところですね。
大学病院はお勧めしない(経験談)
私の経験に基づく話を今からします。
最初に入職した大学病院は、悪い点で3点ありました。
①忙しすぎる
院内処方率99%であり、外来患者の処方箋は600~700枚を毎日調剤しなければなりませんでした。それに加え、待ち時間が長くなり患者にキレられたり、看護師に入院患者の調剤を急かされたりしていました。そのような状況ですので、同僚や上司はピリピリしており雰囲気は非常に悪かったです。気の合う1人の同僚だけが心の救いでした。
②給料が低い
すべての大学病院に当てはまるわけではありませんが、私の職場では残業代ありきで年収400万円台でした。そもそも仕事が定時に終わらないため残業は必須でした。給料が低いと長く仕事を続けられない気持ちになってきます。
③残業が多い
仕事後の時間こそ最も大切な人生の時間です。毎日の残業は自由時間を削っていることに等しいと考えます。基本的に医師が研究や勉強のために在籍していることが多く、残業をいとわない体質の人が多いため、帰るのが19時や20時でも「帰るのが早い」「やる気ないのか」と言われました。残業の最大は30時間までと決められており、それ以上のサービス残業を強いられました。
転職の話は【転職回数が多い薬剤師は不利?理由と内定する方法を現役薬剤師が解説】にしていますのでよろしければ読んでいってください。
準公務員の病院をお勧めする
準公務員は公務員と同じくらいの社会的な信頼があります。公共性をもった仕事として準公務員と指定されているため、高い専門性を求められるがやりがいを感じられる人が多いようです。
給料面も公務員の昇給表に準じているため、長く働くほど給料はUPしていきます。
福利厚生はよく、男性の育児休暇(実際に取りました)や病院の受診代の無償化、提携する保育園の延長料金無料など様々なメリットがあります。
病院薬剤師のやりがい
好きな分野を探しやすい
病院薬剤師の良いところは、多くの仕事内容があるため、好きな分野を見つけることができる点です。専門性を磨いて楽しく仕事をしている人は長く病院で働いています。
例えば、糖尿病・癌・栄養・感染症・小児妊婦・腎臓病・循環器・緩和・精神・・・などですね。
また、治療方針に疑問を感じても、専門に特化した薬剤師に聞けるので、非常に勉強になり薬物治療の奥深さを知ることができます。
日本病院薬剤師会の生涯研修認定薬剤師などの新人向けの資格もありますので、まずはこれの取得を目指すことをお勧めします。この資格が更なる資格の取得要件となります。
医師と相談しながら直接的な薬物治療に関われる
病棟業務や外来化学療法指導を行っていると、ある一定の信頼関係が生まれます。
すると、治療方針や薬剤選択に関して医師と一緒に考えることができるようになります。自信をもってアドバイスを行うことで、直接的な薬物治療に関わることができるのです。これは病院でないとできないことだと思います。
また、いままで分からなかった処方意図がわかり、医師ごとに考え方が違うということを理解できます。
例えば、、
「根治できる癌は副作用が強くても減量せずに頑張るべき」と考える医師もいれば、「強い副作用で体の自由がきかないことの方が癌の進行より悪影響を与えている」と考える医師もいます。
もちろん患者の年齢や背景にも寄りますが、自分が「正しい」と思っていたことを改めさせられることもありました。
こういった経験は忘れない記憶になるので、自分の糧になります。
給料面をやりがいにするのも人それぞれ
もちろん、給料が高い事が一番のやりがいになる方も多いと考えます。当たり前のことですよね。
ドラッグストアに勤務していれば昇給あまりないにせよ十分なお金をもらうことができます。
一つ新人薬剤師に知ってほしいのは、「まずは病院で働く」という選択は間違いではないということです。興味のあることを仕事できるのは幸せだと思います。選択しを増やす意味での病院就職は悪くないかなと考えます。
その場合は、ブラック病院もあるので注意してください。
まとめ
- 病院薬剤師は仕事の種類が多く、興味のあることを探すことができる。
- 病院は医師や医療チームに関わり、直接的な医療に関わることができる。
- 病院に就職するなら、ホワイトな病院を見つけてください。残業が多い施設もあります。
- やりたいことが無くても病院就職によって自分探しをすることができる。
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