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この記事を読むメリット
- 「がんがみえる」の長所と短所がわかる。
- 「がんがみえる」と買うべきかどうかを判断できる。
- 自分の勉強にこの本が向いているか理解できる
「がんがみえる」でできることは
- 癌種ごとの基本事項(罹患率や死亡率・危険因子・自覚症状・癌の特徴)を知る:★★★
- レジメン選択が適切であることを確認する:★★
- 投与量が適切であることを確認する:★
- 開始基準、減量基準、休薬基準、禁忌に該当しないことろ確認する:×
- 副作用の評価をする。:★
- 副作用に対する支持療法を提案する:★
「がんがみえる」で勉強した感想
「がんがみえる」の良かった点
①基礎の病態を細かく、見やすいイラストで知ることができた。
この本にはイラストが多く採用されており、イメージや図で覚えることができます。(とても助かりました。)
それぞれの癌の危険因子や、特徴的な初期症状(食道癌なら食べ物のつかえ・大腸癌なら便秘や血便)について詳しく記載されており、基本の病態についての理解を深めることができた。
入院患者さんは基本的にどのような症状があるのか、食事は今後食べられるのか、便や尿は手術後にどのように排泄方法が変わるのかなどを知ることで、指導するべきことが明確になりました。
今後どのような経緯をたどるのかの予想を立てることができるようになったので、カルテの読む速度が上がったことと、指導記録をスムーズに書くことができるようになりました。
②手術の種類を知ることができた。(手術の図やイラストがわかりやすい)
癌の手術は「部分切除」「全切除」以外にも、癌の切り取り方がたくさんあります。
例えば、大腸癌では癌の発現部位にて手術方針が違います。肛門を閉鎖しストマとするのか、切除した部分をつなぎ合わせて肛門を生かすのか。こういった術式がすべての癌腫で多く存在するのです。
また、内視鏡であったり、Davinciという精密機械を使ったものであったりと、医師以外にはなかなかわからないことに関しても、この本には丁寧にイラストや図をもとに記載してくれています。そのため非常にわかりやすく、カルテを読むために非常に役に立ちました。
その点で看護師の方にも強くおすすめできる内容であると考えます。
術後の管理をする病棟看護師さんには、手術の概要やケアを知ることができるので特にお勧めです。
③基本的な治療方針を理解することができた。
ガイドラインでは治療アルゴリズムが細かく記載されており、見づらく感じることもあります。しかし、この「がんがみえる」の本では、ガイドラインを簡略化して記載してくれているため、癌のSTAGEいくつで手術推奨なのか、薬物療法なのか、放射線治療なのか、おおまかに理解することができます。
私はこの本でおおまかに方針を勉強したあとに、ガイドラインで知識を肉付けしていきました。
術前薬物療法・術後薬物療法・1次治療・2次治療について分類して勉強することができますので、薬物治療の基本的な流れを理解しやすかったです。
④全癌腫を幅広く学ぶことができた。
食道・胃・胆肝膵・大腸などの消化器癌以外にも、乳癌・腎癌・膀胱癌・頭頚部癌・血液腫瘍など、どんな癌腫にも対応できる情報量があります。
この1冊があれば、どんな癌腫の勉強もすることができますので、基礎から学びたい方には向いているとと思います。
⑤癌の総論・療養費・緩和ケアまで情報を網羅している。
意外と個別の癌についての勉強はするのですが、そもそも癌とはどんなものであり、死亡率/罹患率はどの程度であるか、といった「総論」を学ぶことができます。
医療費はどのように計算されるのか、医療費の補助制度にはどのようなものがあるか、を学ぶことができます。(私はこの分野までは読んでおりません。)
癌性疼痛に対する基本的な介入方法についてもこの本で学ぶことができます。オピオイドの使用やその他の鎮痛補助薬の使い方も記載されています。また、オピオイドスイッチングなど、臨床で使用できる情報が多く、とても役に立ちました。
「がんがみえる」の悪かった点
①レジメン1つ1つの情報量が不十分
この本には、各レジメンの開始基準、減量・休薬基準などの記載はありません。
私は普段、外来化学療法室で仕事をしています。レジメンの細かな投与量や副作用による減量や休薬の提案をしなければなりません。この点をカバーしたいのであれば、「がんがみえる」はおすすめできません。
副作用の発現頻度などの記載もありませんので、介入するには向かない本であると思います。
②副作用の確率や対応方法の助言はない。
各レジメンで副作用がどの程度起こるのかの記載がありません。例えば、Grade2またはGrade3の副作用が出たとして、「休薬」すべきなのか「減量」すべきなのかの判断するのにこの本はおすすめできません。
副作用に対して、どのような薬剤で対処すればよいのか。対処方法や対症療法の詳しい記載はありません。
そのため、副作用に介入したい、休薬・減量の提案をしたい場合には、この本は参考にできる本ではありません。
がん認定薬剤師・がん専門薬剤師は、副作用によって減量/休薬を提案したり、副作用かどうかを調べたりするため、「がんがみえる」だけでは戦えません。
勉強用に読むのはいいですが、臨床での介入には不十分です。
③すべてのレジメンを解説していない。網羅できない。
この本は癌治療の全体像を確認し、基本的な治療方針を確認することに向いています。そのため、細かなレジメンの選択方法や最新の治療法など、詳しい内容については記載されていないことがあります。
その点はガイドラインや個別の癌関連の本で学んで、知識の肉付けをしていく必要があると考えます。
レジメンの解説は主要なものだけであり、すべてのレジメンを解説してくれているわけではありません。
レジメンについて学ぶのであれば、別の本「がん化学療法レジメンハンドブック」をおすすめいたします。
→外部リンク「がん化学療法レジメンハンドブック」
「がんがみえる」をおすすめできる人
一から癌について学びたい人
癌について学びたいけど、何から手を付けたらよいかわからない人にはピッタリです。
がんの総論・おおまかな治療アルゴリズム・代表的な薬物治療について学びたい薬剤師・看護師・その他コメディカルのすべての方にお勧めできる本であると思います。
基本的な治療方針を学びたい人
浅く広く網羅できる一冊です。新人や2年目・がん治療のある病棟薬剤師にはまず「がんがみえる」を読むことをおすすめします。
薬物治療だけでなく手術や放射線、緩和ケアなどもセットで学べることも利点です。
イラスト・図で勉強をしたい人
文章や略語が多くて癌の勉強が進まない人には、図解がほとんどであるこの本は合っていると思います。
見やすい図だと頭に残りやすくて覚えるのに助かりました。
特に血液がんは覚えるのが大変ですが、図解のおかげでイメージとして覚えることができました。
医療制度や緩和ケアなど包括的に学びたい人
医療制度についても勉強できる本は難しいものばかりですが、この本は図解がメインであるため理解しやすいと思います。
緩和ケアについては、除痛ラダーからオピオイドスイッチングまで記載されており、この一冊でかなりカバーできるはずです。
「がんがみえる」をおすすめできない人
レジメンの種類や投与量を網羅したい人
「がんがみえる」では代表的なレジメンの記載はありますが、すべてを網羅できません。投与量に関しても、1つの癌につき1~3種類ほどのレジメンしか投与量についての記載はありません。
現場でレジメン内容の確認をしたい人には不向きです。
現場で休薬・減量の提案をしたい人
上にも記載しましたが、限られたレジメンしか紹介されず、さらに減量・休薬基準などの記載はほぼありません。
臨床で副作用症状が出た際には、この本では減量休薬の提案をすることができませんので、おすすめしません。
副作用などへの対症療法において薬剤の提案をしたい人
化学療法による副作用が出現した場合、どのような薬剤で対処するのかといった記載はありません。
そのため、薬学的介入を目的とすると「がんがみえる」は情報が不十分ですので、おすすめしません。
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