薬剤師が不要になる時代が来るって本当?
実際の薬剤師さんの仕事内容が知りたいです。
上のような疑問を持つ方のために、私の経験を書いていきます。
ごくたまにですが、「薬剤師は薬の袋詰め要因でしょ」、「楽な仕事でずるい」とネット書き込みで目にします。
また、AIの発達により仕事がなくなるのでは?とも言われています。
しかし、薬剤師が不要になることは絶対にありません。薬剤師がいなければ大事故になっているケースを、私の経験だけでもいくつもあります。それはAIで解決できない内容も多くあります。
薬剤師の仕事内容。本当に不要になる?
ここでは実際の薬剤師がどんな仕事をしているのか書いていきます。たくさんあるので簡単にまとめていきます。不要かどうかの言及は次の「AIの発達で薬剤師が不要になる?」で解説します。
①調剤・監査業務
調剤とは、医師が処方した薬剤を取りそろえること。錠剤だけではなく粉、水、軟膏もあり、一包化や錠剤の粉砕、軟膏の混合など、患者の飲みやすさを考慮した作業も行っています。
監査とは、処方箋と調剤した薬品が正しいかどうかを確認することです。錠剤の数、用法用量、粉や水薬の量、飲み合わせ、患者説明書の同封等を確認していきます。
②在庫管理・品質維持
内服薬や注射薬は使用期限が決められており、適切な品質管理が必須です。
種類としては、普通薬、劇薬、麻薬、毒薬、向精神薬、生物学的製剤、特定生物学的製剤、があります。
冷所保管の薬物、金庫保管の薬物など、ものによって保管場所が異なります。また、ロット番号で使用された薬1つ1つを記録して20年間保存するものなど、多種多様です。
③服薬指導
病院や薬局では、調剤された薬を患者に渡す際に、適切な服薬が行えるよう「服薬指導」を行っています。病院薬剤師は、入院患者に対して新しく薬が処方されたり、変更されたりした際に間違えないよう指導に伺います。病棟では注射薬の配合変化や速度も確認します。
これは内服薬だけではなく、喘息などに使う吸入薬のキットの操作方法、糖尿の患者に使用するインスリン等の自己注射キットの手技を説明します。
④抗がん剤混注
病院薬剤師であれば抗がん剤の混合調製を行います。混ぜてから時間制限のある薬剤や、当日の量の変更に柔軟に対応しなければなりません。
抗がん剤は対表面積や体重により投与量が決められています。そのため患者の食欲や体重の変化に注目し、投与量は前回と同じでよいのか確認します。体重が変動していて、前回と同じではやや過量投与になっていることは珍しくありません。薬剤師の指摘により防ぐことができた事例は多いです。
⑤副作用モニタリングとマネジメント
薬によっておこる副作用が異なるので、患者ごとに指導内容が異なります。また、年齢や生活スタイルも影響するので、難易度が高い業務です。
患者さんの血液検査の結果を薬剤師も確認します。検査値が薬を投与できる基準値内(減量・休薬基準)にあれば問題ないですが、検査値が悪いのにも関わらず投与する指示が入ることも大いにあります。その場合は医師へ連絡し、たまに中止や減量となります。
必要であれば、対症療法の薬剤を提案もします。その場合は治療ガイドラインに沿った薬剤を提案します。
⑥一般用医薬品の販売 説明
薬局やドラッグストアの薬剤師はOTC(一般用医薬品)の販売を行います。
病院で診てもらわなくても、一時的な痛み止めや熱さまし、目薬等が必要なことがあります。
喘息や持病がある方は、市販薬の選び方には十分注意が必要です。
AIの発達で薬剤師が不要になる?
近年のAIの発達により、薬剤師の単純作業はAIが代わりになるのではないか。と議論されています。
AIができる仕事
①在庫・品質管理
ある程度は機械でできると思います。現在どこの病院も在庫管理システムを導入しています。納品の際の種類・数も管理はハンディ端末でバーコード読むだけでできる時代です。出庫の際もハンディ端末で取り違え防止と数の確認で使用しています。
②簡単な調剤・監査業務
当院では注射薬において「自動ピッキング装置」を用いて、小さなアンプルやバイアルと100mlまでの輸液は自動で患者ごとのトレーに入れてくれます。
錠剤では「一包化」といい、一回に飲む薬剤を同じ袋に入れて調剤する方法があります。これを機械で行っています。よく出庫される錠剤は機械に充填しておくと勝手に一包化してくれます。
③単純な疑義照会
「疑義照会」とは処方箋に疑問がある場合に医師に問い合わせすることを言います。
当院では自動監査システムを導入しており、過去に処方された薬剤と投与期間が重複している際や最大投与量を超えている薬剤、禁忌薬を教えてくれます。非常に便利です。
ちなみに当院では株式会社トーショーの監査システムを導入しています。
④服薬指導説明書のテンプレートの作成
服薬指導の際に患者に渡す「説明書」を自動で作成してくれるので、通常の使用方法の患者さんには使える仕様となっています。
AIにできない仕事
①厳重な管理薬剤
麻薬・毒・向精神薬は施錠管理であり、帳簿で数の管理をしている。AIが発達して自動で取りそろえられる時代が来ても、自動ピッキング装置内部で錠剤の紛失等を完全に防ぐとこは難しいと考えられます。
数が合わなければ「麻薬及び向精神薬取締法」により都道府県と警察署へ届け出をし、その職員と現地調査しなければなりません。AIに任せられる仕事ではありません。
②調剤・監査
調剤時の一包化でも、同一一包化不可も薬剤(メトホルミン+オルメサルタン等)があることや、便秘薬や痛み止めなど、不要になれば使用しない薬剤も含めてしまうのか、ハイリスク薬も一包化するか、などなど柔軟な対応が必要な場面が多いです。
監査時には、監査システムと人間の判断が乖離する事例が多くあります。
例えば、、
- 原則禁忌であるが一般的は普通でよく見る処方(スタチン系+フィブラート系)
- 添付文書での上限量を超えていても必要であるから使用されている(低カリウム血症患者の補正Kなど)
- 開始量と維持量が異なる薬剤でいきなり維持量で開始されている(アリセプト、ビムパット、ビブラマイシン、他多数)
- 併用注意薬との使用では投与量を減量する必要がある薬剤(フルコナゾール併用下のベネクレクスタは通常量の半量)
ただ機械を添付文書に沿ってアラート設定しても、上記のような難しい判断やグレーゾーンの判定はできないです。AIは、不要なアラートを発したり、必要なアラートをスルーすることになります。
AIではなく薬剤師が指摘しなければならない点は多く存在します。
③服薬指導
服薬指導説明書は機械で制作できます。しかし、1つの薬剤に効能効果が複数あるものに関しては、この効果を期待して使用しているのかを判断しなければなりません。
自分の症状ではない効能効果を説明されたら、患者さんは不安になります。
わかりやすい例でいうと、、
そのほか、自己注射キット、吸入キットの指導は文書だけでは理解に苦しむはずです。デモ器を使用し、理解できているかを人の目で判断する必要があります。もし上手く使用できていなかったとなれば、病勢のコントロールができないので高血糖や喘息発作の原因になります。
薬剤師が必要であった実体験3症例
ここでは実際にわたしが患者と接した事例を書いていきます。
まとめ
- 薬剤の取り違えミスや発注ミスを減らすうえでAIは役立つ。
- 薬剤師のスキルはAIで代用はできない。柔軟な対応が必要。
- 完璧に間違いを発見できるシステムはまだ存在しない。
どの職場でもスキルのある薬剤師でいられるよう努力していきたいものです。
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